企業がWLBを導入する際の4つの課題

CSRの全体像に組み込むことが必要

企業がワーク・ライフ・バランス(以下WLB)を推進するうえで直面する課題には、大きく分けると以下に挙げる4つがあります。一点目は、企業によって、WLBの取り組みや成果に大きな差が生じるという「企業間格差」です。

大切なことは、企業の規模や上場・非上場、業種や職種に関係なく、どんな企業でもそれぞれの形態にあったWLBを推進することが可能だということです。「TOYOTAやソニー、資生堂などの大企業ならともかく、うちのような中小企業じゃ到底無理」とか「同業種の他社が全く導入していないので、うちも駄目だろう」と、最初から導入を断念する企業も多いようですが、企業のタイプ別に合わせた導入辞令を掲載している専門書も数多くあります。それらを参考にしてできることからはじめることが大切です。

二点目の課題は、「従来の育児支援施策とどう違うのか?」「どこから手をつけていいかわからない」など、WLBの具体的な推進方法に悩む企業が少なくないといことです。まずは、WLBの定義や地方自治体の施策、導入のメリット、ポイントなどを、専門書や他者の事例を通じてしっかりと学ぶとよいでしょう。

具体的な取り組みにあたっては、経営トップだけではなくほかの経営陣も上手く巻き込み、社内の連携体制を整えることが不可欠です。また、各部署の一戦で一目置かれているリーダーや労働組合を味方につけることも有効ですし、推進途中でプロジェクトを頓挫させないためにも、人事・総務・企画部門といった主要な部署の協力を取り付けるための努力も大切です。

三点目は、WLBが経営戦略や人事戦略と位置づけられずに、単に労働組合からの要求事項や福利厚生施策の一つとして見なされることによって、社内の推進力を書いてしまうことです。

WLBは、重要な経営課題・経営戦略として推進されなければなりませんし、重要な人事戦略でなくてもなりません。そのためには自社の経営理念やCSRに関してもう一度議論し、WLBをCSRの全体像に組み込むことが必要です。また、社員の意識調査などを実施して課題を抽出し、人事制度の見直しを含めて、WLBを推進する必要があります。

四点目は、自社の現状が把握できていないことです。他社のWLB導入事例は大変参考になりますが、同じことをして成功する場合もあれば、上手くいかないこともあります。まずは関連施策の棚卸しを行い、制度や整備状況を確認し、他社やベンチマークとの比較を行いましょう。そして、制度の利用実績や従業員の認知度を調査し、W自社の強みと弱みを明らかにすることから始めると、効率的かつ効果的に推進できます。