仕事と家庭の両立支援に取り組む企業の特徴

ファミリー・フレンドリーを超えた認識に

多様な両立支援策を導入している企業では、社員のキャリア開発を支援する戦略と、コミットメントを高める戦略を人事戦略として掲げている傾向があります。

社員一人ひとりの生産性を向上させるため、仕事面においてはキャリアビジョンを尊重しそれを支援する体制を整備しつつ、仕事以外の面については社員に働き方の裁量を与えることによって対応していると考えられます。

キャリアビジョンを明確にするのに重要なのは、積み上げた実績や経験が適切に評価されることです。多様な両立支援策を実施している企業では、男女の賃金格差が小さく、均等施策を推進していることがわかっています。

両立支援策の取得可能性が高い女性社員にとっては、休んだ期間分を取り戻すことができますし、短時間勤務でもフルタイムと同様の責任を持って成果を出すことを適切に評価される環境が整備されているか否かは、継続就労やモチベーションの向上に大きく影響します。さらに、これらの企業では、正社員の平均有給休暇の取得日数が多い傾向にあることも分かっています。

また、両立支援策を「法令順守のために」「他社もやっているので」といった理由からではなく、「長い目で見れば業績向上に寄与する」と前向きに捉えている企業は、キャリア支援を重視した人事戦略を展開しているという特徴があります。

キャリアビジョンを構築する際には、もはやワークの部分だけを視野に入れて考えることは困難です。キャリアビジョンのなかには家庭生活における責任ばかりではなく、地域活動や自己啓発に関するものも含まれるかもしれません。企業は幅広い選択肢を用意して、社員はその中からか自分のビジョンにマッチしたものを選択しながら、モチベーションを高めていくのです。

さらに、両立支援策の利用機会が多い企業では、社員のキャリア支援、女性の管理職への登用などをはじめとする男女均等施策を戦略として掲げ取り組むとともに、有給休暇の取得向上に取り組んでいる傾向があります。

2007年の就労条件総合調査によると、企業が1年間に社員に与えた有給休暇の日数は平均17.7日ですが、実際に取得したのは8.3日となっています。これを男女別に調査した労働・研究研修機構「年次有給休暇の取得に関するアンケート」によると、男性のほうが女性よりも有給休暇を取得していない傾向にあるとしています。

同様に与えられた有給休暇を男女ともに取得できるような状況になれば、両立支援制度に対する躊躇は次第になくなり、利用機会も増えると考えられます。男女均等施策をあわせて行うことが、制度を利用する傾向を強める可能性があります。