少子化や労働人口の減少の問題解決には、働きやすい環境整備が急務です

企業のあるべき姿

ワーク・ライフ・バランス(WLB)は、内閣府男女共同参画会議の仕事と生活の調和に関する専門調査会によると、「老若男女の誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発など、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態」と定義されています。

WLBは、単に仕事以外の生活の充実を目指すものではなく、家庭生活、地域生活、自己啓発などを充実させて、生活全体のバランスをよくすることで仕事の充実を図ろうとするものです。

企業は、所定労働時間の短縮、休日の増加、残業手当の割り増しなどの位置地率的な施策にとどまらず、従業員一人ひとりが、自ら希望するバランスで実現できるように支援する必要があります。

これからの日本は労働力人口の現象という大きな問題に直面します。厚生労働省の推計によれば、労働力人口は2002年の6689万人から2015年に6600万人、2025年には6300万人に減少します。そのうち59歳以下に限定すると2002年の5761万人から、2015年の5320万人と急激に減少します。

こうした問題に対処するためには、出産・育児のしやすい環境づくりを推進するとともに、全ての人が「自ら希望するバランスで仕事をすることができる環境」をつくり、これまで労働市場に入ってこなかった人々に労働力となってもらいます。こうした人々には、高齢者や女性、新しい就労観と価値観を持った若者などが含まれます。

また、諸外国に比べて日本の女性の年齢罰の労働力率は、30歳代で大きく低下しています。これは、女性が働き続けることが難しいことを示しているとともに、仕事を住するようになった女性が出産を控える要因にもなっています。女性が働きやすい環境を整えることは、WLBの主要課題の一つであり、少子化や労働力人口の減少という問題を解決することにもつながります。

さらに、WLBの対象は、性別・年齢・子供の有無といった属性に限定されることなく、全ての人を対象としたものへと広がりを見せています。内容も出産育児に限らず、介護や働き方の見直し、柔軟な勤務形態の促進へと広がり、支援時期も出産育児期のみならずライフステージ全般へと拡大しています。

企業が行なう代表的な施策とその効果は?

企業が行なうワーク・ライフ・バランスの代表的な施策として、育児介護休業、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、事業所内の託児所の設置、在宅勤務などが挙げられます。これらの施策を導入・推進することでどのような効果があるのでしょうか。

一般的には、WLB施策の導入・推進によって企業の社会的責任を果たすとともに、優秀な人材の確保、従業員の満足度とモチベーションの向上、離職率の低下、メンタルヘルスケア、時間管理の改善による生産性の向上などの効果が期待できるとされています。

さらに最近の研究では、育児休業などにより会社外の時間を持つことにより、別の価値観に触れたり、ネットワークを築いたりして、能力開発に繋がったり、業績が向上する効果があることが明らかになっています。

実際に育児・介護を中心とする家庭生活と仕事のバランス支援を行っている企業を表彰する「ファミリー・フレンドリー企業表彰」を2005年に受賞した東芝(従業員3万人)の担当者は、その効果を以下のように語っています。

「家庭生活の充実だけでなく、個人が社外で研修を受けるなど自己研鑽することもライフの意味の中に入ってきます。従業員がワークとライフのバランスをとることで、自らを高めていくということで企業にとって業績が上がる、パフォーマンスの向上につながっていくという考え方です。 営利を追求しなければならない企業にとって、WLBの推進はコスト面でマイナスではないかと言われますが、そうではありません。従業員をつなぎとめることができるので、優秀な人材を確保できますし、離職率が低下しますから中途採用や教育にかかる費用が減るというメリットもあります。また、従業員が満足して一生懸命働くようになれば、結果として業績アップにつながり会社のためになるわけです。(21世紀職業財団「ESSOR Vol.115」掲載のインタビューより)」

ただし、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて多様な施策を展開することは、企業にとって負担となる可能性もあります。こうした結果、厳しい競争を勝ち残るためにコスト削減を要請する経営戦略と意欲を引き出す人事戦略が衝突することもあり、ワーク・ライフ・バランスの重要性を理解できても、それを推進するコストに見合った効果が果たしてあるのか、という疑問を抱く経営トップも少なくありません。長引く不況下にあって、企業が導入時に直面する様々な課題をいかに克服するかが重要なポイントとなります。